私が入院していたがんセンターには、小児がんの専門フロアが別にあるのですが、
白血病などの血液疾患を抱えた子どもたちは、私たち大人と同じ病棟で治療を受けていました。
治療スペースは子ども専用のエリアに分かれていて、直接の交流はあまりなかったものの、
日々病棟内を歩いていると、その姿が自然と目に入ってきます。
まだランドセルの似合うような年齢の子、
走り回るのが大好きだったはずの小さな子たちが、
点滴を引きながら病棟内を歩いていたり、静かに本を読んでいたり。
本来なら「たくさん遊んで、たくさん学ぶ」時期のはずなのに、
彼らは抗がん剤や放射線治療、骨髄移植など――
大人でさえ耐えるのが難しい治療に、毎日必死に向き合っているのです。
そして、それを支える保護者の方々。
付き添うお母さんやお父さんは、見えないほど深い不安に襲われ、
精神的な疲労も溜まる中、祈るような気持ちとともに
我が子の小さな身体に降りかかる過酷な運命に、
どれほど胸を締めつけられているか…想像を絶する日々だと思います。
けれど――
そんな状況の中で、私が見た子どもたちは、
驚くほど明るく、前向きに、そして笑顔で過ごしていたのです。
きっと、本人も本当は怖いはず。
痛みもあるし、できないことだって増えてしまう。
それでも、彼らは今ある命と向き合いながら、
「今日」という日を懸命に生きていました。
私が病棟の廊下を治療中に運動で歩いていると、
小さな子が笑っている姿を何度も目撃し、
逆に自分のほうが元気をもらっていたのです。
「子どもだから泣いてもいい、弱音を吐いてもいい」――
そう思っていた自分の中に、
「なんでこんなに頑張れるんだろう」と心から感服する気持ちが芽生えていきました。
見えないところで流している涙もあると思います。
言葉にできない不安や苦しみもたくさんあると思います。
それでも、私が見ていた子どもたちは、確かに希望のような存在でした。
彼らの存在は、闘病中の私にとって、
“応援したい相手”でありながら、“勇気をもらう存在”でもありました。
きっと私だけじゃなく、あの病棟で治療していた大人たちは、
みんな同じように思っていたのではないかと思います。
あのとき、出会った子どもたち。
あの笑顔と懸命な姿は、今でも私の心の中に強く残っています。
小さな体で、大きなものと闘っているその姿は、まぎれもなく“勇者”でした。
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