骨髄移植(正しくは「造血幹細胞移植」)は、白血病などの血液の病気を治療するうえで重要な方法のひとつです。移植を受けるためには、自分の免疫の型である HLA(ヒト白血球抗原) が一致するドナーを見つける必要があります。HLAは大きく分けて8つの抗原があって、これがすべて一致することを「フルマッチ」と呼びます。部分的に一致している場合でも移植ができることはありますが、拒絶反応や合併症のリスクが高くなってしまいます。
私の場合、3人兄弟ですが、残念ながら兄2人と私は、HLAがフルマッチしませんでした。
兄弟姉妹の間で完全一致する確率は決して高くなく、一般的には25%程度だといわれています。そのため、兄弟姉妹がいても必ずしも「血縁者間移植」が可能になるわけではありません。ただし、私の場合、兄2人はフルマッチ(完全一致)していました。
血縁者に適合者がいない場合は、「非血縁ドナー」を探すことになります。日本では、日本骨髄バンクを通じてドナーを探しますが、この「非血縁ドナーを探す期間」が患者にとってはとても大きな時間の壁になります。登録してくれている人が見つかったとしても、実際に移植までに進めるかどうかは、健康状態の確認や最終的な意思確認などを経る必要があるため、6か月以上かかるケースも少なくありません。
私の場合、寛解導入療法を1回でクリアできなかったので、その時点で兄弟が自分のHLAを調べ、2回目の寛解導入療法の期間中に、上述したとおり結果が判明し残酷な結果となっていました。
この間、患者は「移植を待つ」という時間を過ごさなければなりません。病気の進行と治療のバランスを取りながら待つ日々は、体だけでなく心にも大きな負担となります。だからこそ、ドナー登録してくださっている方々の存在は本当に貴重であり、感謝の気持ちでいっぱいになります。
そのため、骨髄バンクから非血縁ドナーを探すことになりましたが、移植を進めていく過程では「移植コーディネーター」の方が大きな役割を担ってくれます。コーディネーターは、患者や家族とドナー、病院の間に立って、検査や調整のスケジュール、ドナーの意志確認などを丁寧にサポートしてくれます。患者本人や家族にとっては不安だらけの中、専門知識を持つコーディネーターが伴走してくれることは大きな安心につながるというわけです。
骨髄移植は、「適合するドナーを見つけられるか」というところから大きなハードルがあります。血縁者間移植で適合すれば比較的早く進められることもありますが、そうでない場合は非血縁ドナーに頼ることになり、その準備期間も含めて長い闘いになります。
私自身、兄弟の中で誰ともフルマッチしなかったときの落胆は大きかったですが、その後、非血縁ドナーの可能性を探すプロセスに入っていき、実際、条件の良いドナーさんは、かなり見つかったとの報告も受けました。移植に向かう一歩一歩は簡単なものではありませんが、それでも多くの人の支えと仕組みによって前に進めるものだと思います。
「造血幹細胞移植」と一言でいっても、その背景には、家族の協力、ドナーの存在、コーディネーターのサポート、そして時間との闘いがあります。その一つ一つが、患者にとっては大きな希望でもあり、不安の種でもあるのです。
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