【白血病】「まだ死ねない理由」闘病中の高齢者がくれた希望の言葉

コトバ

入院生活が長くなると、同じ病棟の患者さんたちと自然と顔なじみになっていく。
とくにデイルーム。
患者同士が自由に過ごせる共有スペースは、そうした交流が生まれる場所だった。

点滴スタンドを引きずりながら、テレビの前に集まったり、会話を楽しんだり。
その中で特に印象に残っているのは、同じ時期に入院していた高齢の患者さんたちの姿だった。

年齢を重ねているからこそ、病気に対する不安や身体の負担は大きいはずなのに、
彼らの表情は、いつも驚くほど明るかった。

笑い声が響き、「このアイス、おいしいのよ」なんて会話が飛び交うあの空間は、病院の中でもどこか特別だった。

ある日、ふと聞こえてきた言葉がある。

「孫がね、退院したら遊びに来てって言ってるのよ。だからまだ死ねないの」
「俺はまだやりたいことがあるんだ。笑ってりゃ治療なんてなんとかなるよ」

どれも、冗談交じりのようでいて、そこには“生きる”ことへの強い意志が滲んでいた。

その前向きさに、僕は何度も励まされた。

ときに自分の体調が辛く、気持ちが上向かないときでも、
あのデイルームで交わされる明るいやりとりにふれて、
「自分も負けていられない」と、自然と思えた。

“治療を受ける”ということは、単なる医学的な行為ではなく、
「また○○がしたい」「誰かに会いたい」「家に帰りたい」
そういった“想い”があってこそ、力が湧いてくるのかもしれない。

高齢の皆さんは、決して「年だから仕方ない」とは言わなかった。
むしろ「まだまだ!」と前を向いていた。

その姿は、若い患者にとって、どれほど大きな希望だっただろう。
あのデイルームは、言葉では言い尽くせない勇気を与えてくれた場所だった。

いま振り返っても、あの笑顔たちは、心に残っている。

「まだ死ねない」って、すごく強くて、すごく優しい言葉だと思う。

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