白血病と診断され、命をつなぎ止めてもらった大学病院。
私はそこで短い期間でしたが、本当にお世話になりました。
的確な判断で早期に異変に気づき、適切な検査をしてくださった先生。
そして、転院が決まった日、その先生は私にこう言ってくれました。
「これから大変な治療が始まります。
でも、気持ちが本当に大事なんです。どうか、頑張ってください。」
その言葉は、重みがあって、でもとても優しかった。
短い時間だったけれど、この病院に最初に運ばれていなかったら、今の私はいなかったかもしれない。
そう思うと、感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
そして、いよいよ転院の朝。
病院の外に出るのは久しぶりのことでした。
車椅子に座ったまま、私は晴れ渡った空を見上げました。
どこまでも青く広がる空、やわらかい風、そして眩しい陽射し。
久しぶりの外の空気はとても清々しくて、「ああ、生きてるんだな」と実感しました。
けれど、これは“退院”ではありません。
むしろこれから始まる本格的な治療への第一歩。
「これが完治して退院する日だったら、どれほど嬉しかっただろう」
そんなことをふと考えてしまいました。
転院先のがんセンターまでは車で20km弱。
車窓から見える風景――海、山、広がる緑――そのどれもが、心にしみました。
束の間のドライブのようでいて、実は“命を託す場所へ向かう時間”。
どこか静かで、でも心の中はざわついていて、不思議な感覚でした。
「ここからが本当のスタートだ」
そう自分に言い聞かせながら、がんセンターの建物が見えてきた時、
胸の奥がギュッと締めつけられるような気持ちになりました。
この病院で、私は闘う。
治療なしでは、病気は治らない。
わかっているけれど、それでもやっぱり怖かった。
けれど、逃げるわけにはいかない。
前に進むしかない。
到着後はそのまま車椅子で院内へ。
手続きが進み、いよいよ病棟のフロアに入りました。
その瞬間、私は自分の心に強く言い聞かせました。
「よし、やるしかない」
自分にしかできない闘い。
でも、決して一人ではない。
たくさんの人の支えがあって、私はこの場所に来ることができた。
そんな想いとともに、新しい一歩を踏み出しました。
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